家族に癒しや幸せな時間をたくさんくれる愛犬。
しかし、犬は私たちの何倍もの速さで成長し、いずれ別れの日がやってきてしまいます。
いざという時に慌てないために、ペットちゃんが元気なうちから家族で最期の過ごし方を話し合っておくことが大切です。
今回は、愛犬の最期にしてあげられることや、亡くなる前に見せる症状などをご紹介します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
犬は種類にもよりますが、人間の年齢にすると生後2年で22~24歳になります。その後1年ごとに4歳程度ずつ年をとり、生後7年~10年ではシニア犬となります。
犬の平均寿命は10~15歳といわれています。
体の大きさや種類によっても異なり、超小型犬のチワワは13~15歳、小型犬のミニチュアダックスフンドは13~16歳、中型犬の柴犬は13~16歳、大型犬のゴールデンリトリバーは10~13歳くらいです。
また、シニア期に入ると白髪が増える、目が白く濁る、段差を避けるようになるなど少しずつ変化が起こります。
元気に走り回っていた愛犬が寝たきりになってしまうケースもあります。
その場合は介護が必要になりますので、介護の方法やシニア犬用の介護用品を調べたり、ご家族で話し合うなど、いつ介護が必要になっても慌てないように心の準備をしておきましょう。
もちろん、食事や運動などの生活習慣によっても寿命は変わりますので、健康管理をきちんとしてあげることが大切です。
弱いところをあまり見せずいつも元気な愛犬ですが、亡くなる前はいつもと違う症状を見せることがあります。犬は1年で4歳ずつ年を取るため、とくにシニア犬は日々のちょっとした変化を見逃さないようにしましょう。
一番気づきやすい変化として、食欲がなくなることが挙げられます。
ご飯の時間を楽しみにしていた愛犬がご飯をまったく食べない場合は、体調がよくないサインかもしれません。
他のご飯やおやつは食べるか、水は飲んでいるかなどを確認して獣医師に相談するようにしましょう。
また、ずっと寝ているなど、睡眠時間が急に伸びている場合でも注意が必要です。
シニア犬は若い犬に比べて睡眠時間が長くなりますが、ご飯も食べずに寝ているようになった場合は、注意が必要です。
特に、声をかけてもぐったりして動かないというような場合は、獣医師に相談して診てもらいましょう。
視覚や聴覚などの感覚が鈍って呼びかけに答えない、夜鳴きが増えるなど、普段と違う様子を見せていたら注意が必要です。
愛犬の元気が無い場合は、体調不良か、命の灯が消えかかっているサインなのかを判断することも飼い主の大切な役目。
特に「目の力が入らなくなる」「意識がもうろうとして痙攣している」などの様子が見られた場合は要注意です。
これは犬が亡くなる数日前に見せる危険な兆候です。早めに対処してあげましょう。
異常を感知した場合に慌てないように、最寄りの動物病院への連絡先を控えておくことも大切です。
愛犬の排泄物は健康のバロメーターです。日頃からよく観察してあげましょう。
尿の量が極端に少ない場合や、血便をしたりしている場合は腸や腎臓など内蔵に問題がある場合が考えられます。
また、愛犬が粗相をした場合は理由をしっかり考えてあげましょう。大まかに以下の理由が考えられます。
*愛犬が粗相をする理由は?
焦らずに状況を判断してあげることは、愛犬の健康管理のためにとても大切です。
目の焦点が合わなくなってくる、まぶたが上がらなくなって目を開けられない、といった症状は要注意です。
その状態で名前を呼んでも反応しない場合は、死期が迫って意識を失いかけている可能性があります。
愛犬の意識がもうろうとしている場合は、外見に加えて呼吸の様子を確認することも大切です。
犬は亡くなる直前、浅い呼吸からだんだん深い呼吸に変わり、その後無呼吸となる異常な呼吸サイクルを繰り返すことがあります。これをチェーンストークス呼吸といい、この症状が見られると余命はあと数時間から数分となることが多くなります。
愛犬が飼い主様の呼びかけに反応しなくなり、意識がもうろうとしてくるとけいれんが起きることがあります。
何度もけいれんをしている愛犬を見ていると、苦しそうで飼い主様も辛い気持ちになることでしょう。
自然に治まるのを待つのも良いですが、長く続くのであれば病院で抗けいれん薬を処方してもらいましょう。
また、周囲に物を置いている場合は、不意にぶつかってしまわないように片付けておきましょう。
意識が薄れている愛犬を見るのは辛いかもしれませんが、目を逸らしていてはお見送りに悔いが残ります。
ご自身のため、何よりペットちゃんのために声掛けをして、少しでも安心させてあげるようにしてください。
「旅立つ寸前の愛犬が意識を取り戻し、飼い主に挨拶をしてから旅立った」というエピソードをネットでは多く見かけます。
これは本当なのでしょうか。
人間には死期が近づくと一時的に体調が回復する「中治り(ラストラリー)現象」という現象が起こることがあります。
この現象は亡くなる数日前に発生するケースが多いことに対し、犬が挨拶をするのは亡くなる直前が多いようです。
そう考えると、犬が挨拶してくれるのは中治り現象とは無関係とも考えられます。
理屈ではなく、犬たちは限られた時間の中で、最後の力を振り絞って家族に別れの挨拶をしてくれるのかもしれません。
愛する家族の挨拶を見逃さないためにも、できる限り最期を迎えるまで見送ってあげたいものです。
愛犬を看取った飼い主様の中には、このようなお別れの体験をした方がいるようです。
・尻尾を振ってくれた
寝たきりになってしまった愛犬が家族が見守る中で一度だけ尻尾を振ってから息を引き取った。
・帰宅を待っていてくれた
朝はずいぶん体調が悪そうにしていたので覚悟していた。
しかし、家族が全員揃う夜まで頑張ってくれて、家族全員が揃ったことを確認してから一声吠えて亡くなった。
・甘えてくれた
子犬のように甘えた鳴き声を出したり、飼い主に寄り添って離れなくなったり、甘えるような態度を取ってきた。
不安な気持ちを伝えたかったのか、これまでの感謝を伝えたかったのか、本心は誰にもわかりません。
しかし、犬が大切な家族に何かを伝えてから旅立つことは多いようです。
愛犬がシニア期に入ったり、余命を告げられたりすると「愛犬に何かしてあげたい」と飼い主様は思うものです。
後悔のない最期を迎えられるように、この章では愛犬に最期にしてあげられることをご紹介します。
老犬は運動能力が下がっていき、ちょっとした段差を超えられずに怪我をする恐れがあります。
トイレの位置を過ごしている場所の近くに寄せてあげるなど、犬が少しでも快適に暮らせるように工夫してあげましょう。
ただし、大幅な模様替えはこれまでの記憶と感覚を頼りに部屋を歩く老犬を混乱させてしまうので注意が必要です。
また、エサを食べにくそうにしていたら、流動食など食べやすいメニューを組んであげましょう。
また、自分で食べられない場合はシリンジポンプ(針のない注射器)で食べさせてあげることも大切です。
噛む力が弱っている場合は、食べやすいように細かくして食べさせてあげるといいでしょう。
愛犬にとって、大好きな家族と過ごす時間は何より幸せな時間のはず。
もし、就職や進学などの事情で愛犬とご無沙汰な場合は予定を付けて会いに行ってあげましょう。
筆者は進学のために数年ほど実家を離れていた時期がありました。
当時すでにシニア期を迎えていた愛犬は会うたびに毛並みが白髪交じりになっていったのを覚えています。
最後に会った時にはすっかり体を悪くして寝たきりになっていたことが、今でも悔いを感じる思い出です。
悔いを残さないよう、元気で会いに行けるうちに、愛情を伝えてあげることが大切です。
愛犬が寝たきりになったら、清潔な環境で床ずれを防いで生活させることが大切です。
清潔な体を保つために、濡れタオルや刺激の少ないおしりふきなどで週に1回程度お手入れしてあげましょう。
体のお手入れに加えて、長時間同じ体勢にならないよう、2~3時間を目安に体勢を変えることも大切です。
タオルを使った体の保護や床ずれを防止する介護用マットを使うのもおすすめです。
また、寝たきり状態であっても退屈しないようにしてあげることも大切です。
窓を開けて外の風を入れたり、日光浴させたりと、外の様子を感じさせてあげれば良い気分転換になるはず。
さらに、床ずれ対策とスキンシップを兼ねて血行促進のマッサージをすれば、愛犬との絆が深まるでしょう。
愛犬が歳を重ね、自分での生活が難しくなった場合は介護してあげる必要があります。
「いぬのきもち WEB MAGAZINE」が行った「犬の介護に関するアンケート」では【愛犬の介護にあたってまず始めたこと】は86名の方が「食事内容の変更」81名が「住環境の整備」と回答。
さらに【愛犬の介護で大変だったこと】は77名の方が「トイレのお世話」65名が「食事のお世話」と回答していました。
このアンケート結果から、愛犬の介護を始める前には食事・住環境など愛犬との生活自体を一度見直す必要があること、トイレ・食事など身の回りのことをしてあげるためにある程度は付きっきりでお世話してあげられる環境づくりが必要になることがわかります。
仕事など生活の都合で環境づくりが難しい場合はペットシッターの利用を検討するなど、老犬になっても幸せに暮らしてもらえるように、きちんと考えてあげましょう。
*参考サイト
「犬の介護」に関するアンケート「いぬのきもち WEB MAGAZINE」
愛犬が亡くなった際は、感謝を込めて見送ってあげましょう。
亡くなってから慌ててしまわないように、亡くなる前から家族で話し合っておくことが大切です。
この章では、愛犬が亡くなる前に決めておいたほうがいいことをご紹介します。
愛犬の介護方法や火葬した後の火葬方法については、家族全員が納得できる結論を出しておくことが理想です。
話し合う際は以下のように「見送るまで」「見送ってから」のように分けて話し合うと意見がまとまりやすいです。
【見送るまではどうする?】
【見送った後はどうする?】
いざその時を迎えた際に慌てないように、何より悔いを残さないように家族全員でしっかり話し合ってください。
犬は仲良くしてくれた散歩仲間とその愛犬、SNSや動画を通した交流など、たくさんの人と関わるきっかけとなります。
そのため、お世話になった方々に愛犬の訃報をいつ、どのように知らせるか迷ってしまう方も多いです。
訃報は相手に気を使わせたり、ショックを与えたりする可能性があるため、タイミングは慎重に選ぶ必要があります。
お世話になったからこそすぐに訃報を伝えたいのか、落ち着いてから伝えたいのか、家族で相談しておくのがおすすめです。
また、訃報の知らせ方やSNS・手紙を用いた告知を行いたい方はこちらの記事を参考にしてください。
愛犬は大切な家族ですので、お別れのことを考えるだけで辛い気持ちになると思います。しかし、万が一の際に備えておくことはとても大切なことです。
そのためには、愛犬にどのような最期を送ってほしいか、どのように送りだしてあげるのがいいか家族で話し合っておきましょう。お住まいの自治体の火葬方法を調べたり、葬儀業者に事前に相談するのもいいでしょう。
この記事の執筆者
ペット火葬
ハピネス 編集部 J・N
愛するペットちゃんとのお別れによって心に深い悲しみと不安を抱えた飼い主様を支えられるような、わかりやすく正確な記事作成を心掛けています。自分のこと以上に大切な家族を思いやることができる優しい心を持った飼い主様の力になれるように努めます。
※許認可の関係等で現在対応できない地域も
一部ございます。