結論からいえば、ペットちゃんの遺体を土葬すること自体は違法ではありません。
しかし、行う場所や状況はきちんと見極める必要があり、正しい知識と判断が不可欠です。
そこで今回は、土葬する際の注意点からメリットやデメリット、適切な土葬方法まで徹底解説します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
ペットちゃんの遺体をそのまま土に埋葬する「土葬」は違法ではありませんが、無条件でどこでも行えるわけでもありません。知らずに行うと後々トラブルになる可能性もあるので、土葬できる条件と土葬に適した場所をしっかりと確認しておきましょう。
土葬をする際に気を付けなければいけないのは法律に違反しないことです。
飼い主様にとっては愛するペットちゃんの遺体でも、法律上は「一般廃棄物」に区分されるため、私有地以外の場所に埋葬すると「不法投棄」とみなされ処罰されるのです。
加えて、私有地内だとしても川や湖などの近くに埋葬することは刑法で禁止されています。
ペットちゃんの遺体を水辺に埋めることで、遺体から感染症を引き起こすウイルスが発生するなどし、それらの有害物質が水に溶けて水源を汚染する可能性があることが理由です。
*参考サイト
明示四十年法律第四十五号 刑法(第二編 罪、第十五章 飲料水に関する罪)
土葬に適しているのは「私有地である」「水源から離れている」「近隣住宅とある程度の距離があいている」の3つが揃っている場所です。
一緒に遊んだ公園や河原など思い出の場所に土葬したいと考える方もいらっしゃいますが、法令違反となるので注意が必要です。
また、飼い主様にとっては大切なペットちゃんでも、他の人にとってはただの動物の遺体です。ご近所トラブルの原因になることもあるので、近隣住宅とはある程度距離をあけて埋葬しましょう。
後々「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、ペットちゃんの遺体を土葬するメリットとデメリットをしっかりと把握しておきましょう。
いつでもお墓参りでき、ペットちゃんの存在を近くに感じられることが飼い主様にとって一番のメリットでしょう。
ペット火葬業者やペット霊園に依頼すると、火葬費用、納骨料、お墓の年間管理費などがかかります。
対して土葬の場合、穴を掘るなどの手間や労力はかかりますが、準備物も少なくて済むので費用はほとんどかかりません。
ペットちゃんの大きさにもよりますが、小動物でも土に還るまで数年かかり、犬や猫などの大きな動物であれば数十年とさらに長い時間がかかります。
それまでの長い月日を過ごす中で不測の事態で引越しや土地を手放す必要性が出てくる可能性は否定できません。
ペットちゃんを土葬した土地を売却などで手放す場合は、トラブル防止のために「土葬を行ったことを買主に伝える」「別の供養方法を考える」などの対策を行う必要があります。
掘り起こすこともできますが、大好きなペットちゃんの変わり果てた姿を目にするのは飼い主様にとっては酷なことでしょう。
遺体からは、朽ちて土に還る過程で強烈な臭いが発生します。土葬方法に不備があると、その臭気が漏れ害虫が寄ってくることに。
筆者は「ある日突然、実家内に原因不明の悪臭が漂うようになり、害虫が大量に侵入してきた」という恐ろしい経験をしたことがあります。父が調査したところイタチが床下で亡くなっていたことが原因だと判明しました。
強烈な悪臭やひっきりなしに出現する害虫による精神的苦痛は非常に大きく、また仮に原因が見付からず被害が拡大していたらと考えるとぞっとします。
同じようにペットちゃんの遺体を土葬する際には害虫や悪臭に注意する必要があります。
動物の嗅覚は人間と比べ圧倒的に優れているため、微かな臭いでも寄ってきてペットちゃんの遺体を掘り起こされてしまう可能性があります。
ペットちゃんの遺体を地中深くに埋めるのはもちろん、定期的な確認と管理が必須です。
この章では実際にペットちゃんの遺体を土葬する方法をご紹介します。
①スコップなど土を掘る道具
②木炭や段ボール、石灰などの腐食しやすいもの
③木綿など天然素材100%の布
④目印となる石や木など
①穴を掘る
スコップなどを使って、1~2mほど穴を掘ります。
②底に腐食しやすいものを置く
木炭や段ボール、石灰など腐食しやすいものを穴の底に敷きます。
③布で遺体を包む
木綿などの自然素材100%の布で遺体を包みます。
④遺体を寝かす
腐食しやすい物の上に、布で包んだペットちゃんの遺体を優しく寝かせてあげます。
⑤土を戻す
ペットちゃんに感謝の気持ちを込めながら、土を戻します。
遺体が土に還った際、地中に空間ができて陥没するので、土は30㎝ほど盛るようにします。
⑥目印(墓標)を置く
ペットちゃんを埋めた場所がわかるように、また万が一掘り起こすことになった場合のためにも、必ず石などの目印(墓標)を置きます。
ペットちゃんの安らかな眠りのためにも、土葬を行う際に注意して欲しいことが3点あります。対策も一緒にお伝えしますので、ぜひご確認ください。
ペットちゃんの遺体が土に還るまでに、ハムスターやインコなどの小さなペットちゃんでも数年、犬や猫なら数十年はかかります。その長い年月、ペットちゃんのお墓を管理していく覚悟が求められます。
*対策*
化学素材の玩具や金属が使用された首輪などは土に還りにくい素材のため、一緒に埋葬してはいけません。
*対策*
悪臭や害虫が発生すると近隣へ被害が拡大する恐れがあります。
またペットちゃんが生前、投薬治療を受けていた場合、化学物質が地中に溶け出し、近隣の畑や植木に悪影響が出ることもあります。
*対策*
土葬のやり方や注意点、デメリットなどを詳しく知ったことで、「土葬は現実的に難しいかも」という結論に至った方もおられるのではないでしょうか。
そこで、ここでは土葬以外の供養方法をご紹介します。
自治体にペットちゃんの遺体を引き取ってもらうことができます。しかし、ほとんどの自治体では「一般廃棄物」としてゴミと一緒に焼却後、埋め立てられるため、遺骨を残すことはできません。
お住まいの地域によって対応が異なるため、思っているような供養ができるか事前に確認してから依頼しましょう。
マンションなどで庭がないご自宅の場合、小型のペットちゃんに限られますが、ベランダなどに置いておけるプランターに埋葬して供養する方法も人気です。
プランター葬なら水源・土壌汚染などの心配はありませんが、土葬と同様に害虫や異臭に気をつけましょう。
ペットちゃんも大切な家族の一員として、人と同じ手順で供養したいという飼い主様も増えています。そのためペット火葬業者にて火葬してもらってから、遺骨をペット霊園に納める、または私有地に埋葬するなどの手元供養をされる方も多いです。
埋葬時、遺骨であれば、遺体のままよりも早く土に還ることができますし、悪臭や害虫の発生を防ぐこともできます。
ペット火葬業者は、供養に関する相談にも乗ってくれます。
土葬でなければいけない理由がないなら、希望する条件にあう別の供養方法をアドバイスしてもらうのもおすすめです。
ペット火葬業者の選び方についてはこちらで紹介していますので、参考にしてください。
遺骨をパウダー状に粉砕して、海や山などに散骨する供養方法です。
お墓を維持する費用や手間がかからないメリットがありますが、私有地以外で散骨する場合は土地の所有者の了承を得ることが不可欠ですし、散骨が禁止されている場所もあるため、事前に確認しましょう。
ペットちゃんの遺体を土葬すること自体は法律上問題ありません。
しかし、場所や方法によっては近隣に迷惑をかけたり、法律に違反してしまったりする恐れもあるため、充分に注意を払って適切に行わなくてはいけません。
土葬のメリット・デメリットを把握したうえで他の供養方法との比較なども行い、愛するペットちゃんと飼い主様にとって最善の供養方法を選択してください。
この記事の執筆者
ペット火葬
ハピネス 編集部 J・N
愛するペットちゃんとのお別れによって心に深い悲しみと不安を抱えた飼い主様を支えられるような、わかりやすく正確な記事作成を心掛けています。自分のこと以上に大切な家族を思いやることができる優しい心を持った飼い主様の力になれるように努めます。
※許認可の関係等で現在対応できない地域も
一部ございます。